南望 備忘log

深瀬昌久氏が死去!?2012年06月19日 13:42

氏の「ふるさと」が載った、アサヒカメラ1972年11月号
  写真家深瀬昌久氏が死去された。この写真は氏の「ふるさと」が載った、アサヒカメラ1972年11月号で表紙の写真は篠山紀信氏による木村伊兵衛氏のポートレート。深瀬昌久氏じゃないよ。

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深瀬昌久氏 78歳(ふかせ・まさひさ、本名・よしひさ=写真家)9日、脳出血で死去。1992年、階段での転落事故に遭い、療養を続けていた。)  北海道の写真館に生まれ、60年代に作品発表を開始。家族写真にヌードを交える手法などを用い、私性に肉薄する仕事で注目された。写真集に「洋子」「家族」「鴉(からす)」など。74年、米・ニューヨーク近代美術館の「ニュー・ジャパニーズ・フォトグラフィー」展に参加。転落事故後も写真集の復刻などで再評価が続いていた。 (2012年6月11日15時38分 読売新聞)

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 以前、おいらのmixiの自己紹介にこんな文を書いたんだ。

 ・・・荒木経惟氏の東京物語という89年に出た写真集がありますが、その中に「廃屋の階段から落ちた私」というよくわからない写真があります。深瀬昌久氏が新宿のゴールデン街で、酔って階段から足を滑らせ廃人となってしまったことのパロディだと思い込んでいたのですが、それは92年の出来事だったんですね・・・

 なんでこれが自己紹介なのかは置いといて、氏の写真集はもう高くて手が出なかったんだけど、同じ思いで居られた方がいらっしゃったんだ。

深瀬昌久保存計画 Archive

 写真の事は、よく分からないけれど、アサヒカメラの「ふるさと」にであって以降、深瀬氏のことは気になっていた。

 時代は荒木氏が牽引するドキュメンタリーなエログロナンセンス再来的過激ブーム(といっていいのかよくわからんが)、柳の下のドジョウねらいのエロい写真雑誌が次々創刊されていた。氏の名前はそんな中で創刊された「流行写真」にも見つけて、近寄りがたい印象を再確認していた。もっとも、当時、何にも分からん若造の自分には、写真家はなんだかみんな近寄りがたい印象であったけど。

 なんとなく、写真家は無頼派的なイメージで、過激で、近づくと怪我しそうな危ない印象だったな。みんな、暴力の中に平気で入っていって、命を落として来ても気がつかんみたいな。

 そんな氏が猫の写真を撮っていた。

「猫の麦わら帽子」このタイトルがかわいすぎる!


 動物写真家の岩合光昭氏も、猫の写真をいっぱい撮ってるけど、氏の「ネコさまとぼく」によると、「1970年代当時、ネコの写真といえば、毛の長いペルシャネコやシャムネコを室内で撮影したようなものか、バスケットに入った子猫が驚いたように目を丸くしている写真でなければ、ネコの写真としてかわいいと認めてもらえなかったのです。・・・中略・・・野良ネコと呼ばれるようなネコの写真は、なかなか雑誌や本に使ってもらえないのが、その頃の現実でした」という時代だったようだ。

そんな70年代も終わる頃にネコの写真集。深瀬昌久氏の。

「サスケ!! いとしき猫よ」


 不思議だったけど、かわいいというより、切ない。たくましくて、でも、はかない。そんな印象の猫の写真集。

 梅津 ふみ子氏の「風の猫」という本が出てる。「猫を愛し猫に愛されたひとへ。最愛の猫を失った悲しみを愈す、女流歌人の挽歌と写真。 」という内容。写真は武田 花氏、深瀬 昌久氏 、荒木経惟氏の写真集からの流用。

この本の書評をAMAZONに書いたことがある。

 「猫のかわいらしい写真集が巷にあふれる今日、猫たちはアニメのキャラクターのように抽象化され翻訳され、本来彼らではないものに置き換えられ、愛されている。いや、愛されているのはそのイメージであり、置き去りにされたケモノたちはこんなイメージと接点を持つことも無く今日も風の中にいる。いや、置き去りにされたのは著者自身なのだ。風が吹き抜け、愛するものが去ってしまう。著者の胸の内から搾り出される切ない恋歌。そして挽歌。深瀬昌久氏の写真はいつも過ぎ去った美しい日々を、何も無くなった今と対比させる。深瀬氏がおそらく人生の中でもっとも楽しく無邪気で居られた時期の写真が著者の寂しさをいっそう際立たせる。印刷の問題はあるにしても、現在、普通に手に入れることが出来る、深瀬氏の猫の写真が載った唯一の本では無かろうか。その意味でも貴重な一冊。 」

 その後、手に入れることが出来たのはこの二冊だけだった。「hysteric Twelve」と「b u k u b u k u」

「hysteric Twelve」と「b u k u b u k u」


 深瀬昌久氏のご冥福をお祈り申し上げます。

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